経営環境及び対処すべき課題

国内の金融業界は、近年、人工知能やビッグデータ解析等の情報技術の発展によって新たな金融サービスを提供するフィンテック企業が台頭する中、異業種からの業界参入が相次ぐなど、大きな変革の時を迎えています。また、証券業界やFX業界においては、業界が成熟する中、手数料無料化やスプレッド縮小の動きが加速し、顧客獲得競争が一段と激化しています。

このような事業環境の中、当社及び当社連結子会社(以下「GMO-FH」)は、次の分野における取り組みを加速させ、外部環境の変化をチャンスに変えて新たな価値を創造し、持続的成長と企業価値の向上を図っていきます。

組織力の強化

GMO-FHは、金融システムを自ら開発できる高い技術力を武器に、常に最先端のテクノロジーを研究し、最適なテクノロジーを組み合わせることで成長を遂げてきました。さらなる成長のためには、最大の強みである技術力を研ぎ澄ますとともに、その技術力を社会に還元する手法を生み出せる、柔軟な思考力を持つ人財の確保・育成が必要であると考えています。個性と多様性、徹底的な議論を大切にすることで、既存の枠組みに囚われない自由な発想やアイデアが生み出されるクリエイティブな組織風土を醸成し、お客様にとって本当に価値のある便利なサービスをスピーディーに、そしてリーズナブルに提供できる組織を目指します。

証券・FX事業のさらなる強化

証券・FX事業においては、「強いものをより強くする」の方針のもと、FXやCFDなどの店頭デリバティブ商品の収益力強化と各商品のクロスセルの推進に取り組み、さらなる成長を図ります。

FX取引については、スプレッド競争が再燃するなど外部環境の厳しさが増す中、GMO-FHは、グループ各社間のシナジーを発揮しながら収益性改善の取り組みを推進し、安定的な収益を確保するとともに利便性向上の取り組みを通じてさらなる顧客基盤の拡大を図り、持続的成長の実現を目指します。

CFD取引については、今後も、商品認知度の向上に向けたマーケティング施策や利便性向上の取り組みを通じて市場・顧客基盤の拡大を図るとともに、他商品とのクロスセル施策を推進し、一層の成長を目指します。

株式取引については、国内証券業界において売買手数料無料化の波が押し寄せるなど、非常に厳しい環境に置かれています。利便性の高いサービスを提供することで顧客基盤を維持するとともに、貸株サービスの強化や他の金融商品もあわせてお取引していただけるようなマーケティング施策展開や徹底的なコスト削減を進め、収益性の向上を図っていきます。

暗号資産事業のさらなる強化

暗号資産事業においては、GMO-FHがこれまで金融事業で培ってきた高い技術力を活用し、安心して暗号資産を取引できる環境を提供しています。セキュリティ・顧客資産管理の体制強化や金融犯罪の発生等の防止やマネー・ローンダリング、テロ資金供与対策等の高度化に継続して取り組むとともに、銘柄追加やAPI機能の強化、IEOの提供や資産形成を目指した積立型の商品、貸暗号資産サービスなど、商品・サービスの拡充と利便性向上に向けた取り組みを推進し、国内No.1の取引高シェアの実現と利益成長を目指します。

新規事業の開発、海外事業展開の加速

GMO-FHは、少子高齢化・人口構成の変化や市場の成熟化の影響を踏まえ、長期的には国内の既存事業の成長余地は限られているとの考えのもと、新規事業の開発と海外事業展開を加速させることで、中長期的な企業価値の向上と持続的成長の実現を目指しています。

新規事業については、強みであるシステム開発力を活かして、社会的ニーズが高く、今後成長が見込まれる新しい事業領域での取り組みを積極的に進めていきます。NFT事業では、NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」のコンテンツ拡充と利便性向上に取り組み、IPホルダーとファンをつなぐNFT市場No.1のプラットフォームの実現を目指すとともに、バーチャルオフィス事業では、サービス提供エリアを順次拡大することで顧客基盤を強化し、利益拡大を図ります。

海外事業については、現在、香港を拠点にした店頭FXなどの店頭デリバティブ取引サービスの提供に加えて、タイ王国でインターネット証券取引サービスを提供していますが、今後、新たな地域への進出も検討していきます。2022年12月には、スピーディなビジネス展開を支える開発体制を強化するための海外開発拠点として、ベトナムに子会社を設立しました。国内事業で培った技術・ノウハウをフルに活用し、世界各国のお客様のニーズに応じたサービスを提供するとともにマーケティングを強化することで、事業規模の拡大と収益力の向上を図ります。なお、タイ王国での証券事業においては、2022年12月期第4四半期連結会計期間に顧客の信用取引に関連し貸倒引当金繰入額の計上を行ったことから、再発防止と信用リスクの低減に向けて同社のリスク管理態勢を強化するとともに、当社における海外子会社に対するガバナンス体制を一層強化していきます。